初めての役員・取締役入門

会社の所有者である株主ではなく、経営の専門家である「取締役」が株式会社の実際の事業を行うのです

取締役の権限と職務
このエントリーをはてなブックマークに追加

取締役の権限と職務

取締役の権限の範囲

取締役の権限の範囲

取締役の遂行する業務の範囲は、取締役会のある会社とない会社とでは異なります。

取締役会を設置しない「取締役会非設置会社」では、原則として取締役は会社を代表してその業務を執行します。

そこで、取締役がひとりの会社は、業務執行の内容をひとりで決定し、執行することができます。

取締役が複数いる会社では、重要な取引や契約などの社内的な業務執行の決定を、取締役の過半数によって決定します。

取引先との契約などに代表される社外的な業務の執行は、基本的には各取締役が行いますが、定款または取締役の互選によって代表取締役を定めた場合は、代表取締役が業務を執行します。

また、取締役は、会社に著しい損害を及ぼす事態を発見した場合には、すぐに株主や監査役に報告しなくてはなりません。

なお、大企業では取締役は「内部統制システム」をつくらなくてはなりません。

一方、取締役会を設置する「取締役会設置会社」の場合は、3名以上の取締役で構成される取締役会が会社の重要な業務執行に関する決定を行います。

また、代表取締役を選定し、権限を委任し、その業務の執行状況を監督します。

取締役会設置会社は、大規模な事業を展開し、株主も多数に及ぶケースを想定しています。 (さらに…)

取締役の決定権限と監督権限

取締役の決定権限と監督権限

取締役会には、業務執行を行う取締役が法令や定款に違反する行為を行っていないかどうかを監督する義務があります。

また、取締役には、取締役会の構成員として他の取締役の業務執行を監督する義務があります。

取締役は、他の取締役が自らの職務権限を利用して不正行為を行ってる事実を発見した場合は、その事実を取締役会で報告して、不正を行った取締役から事実関係を確認し、違法行為があった場合はその責任を追及するなどの適性な監督を行わなくてはなりません。

この監督義務を怠ると取締役としての任務懈怠となり、会社に対して損害賠償責任を負うことになります。

つまり、取締役には互いの業務を監督し合う義務があるのです。

そこで、他の取締役の不正を見過ごした場合には、不正行為を行った役員と同様に損害賠償請求される可能性もあります。 (さらに…)

業務執行と監督の分離

業務執行と監督の分離

取締役になったからといって、自由に経営の意思決定ができるわけではありません。

取締役会設置会社では、経営に関する重要な意思決定は取締役会が行い、その過半数の賛成が必要となります。

つまり、取締役個人には、対外的な職務執行の権限はありません。

重要な契約や多額の金銭の貸し借りなどもすべて取締役会が決定し、最終的に代表取締役の押印で成立します。

このように、取締役それぞれの権限は、取締役会の構成員として取締役会の決議事項を決めることで、取締役個人には、勝手に業務執行する権限はありません。

一方、代表取締役は、重要な業務執行の決定を行うことはできませんが、それ以外の業務については自ら意思決定を行い、会社を代表して契約を締結することができます。

しかし、代表取締役以外の取締役には業務執行権はないので、専務や常務、その他の取締役が契約を有効に成立させるためには、取締役会で業務執行権限があることを決められていなければなりません。 (さらに…)

監査役・会計監査人・会計参与

監査役・会計監査人・会計参与

取締役や取締役会には、代表取締役をはじめとする他の取締役を監督する権限があります。

しかし、会社の規模が大きくなればなるほど、それだけでは十分ではないので、取締役の業務をチェックする機能を強化する必要があります。

そこで、会社の規模やシステムにあわせて、監査役や会計監査人、会計参与などの、取締役の業務執行を客観的に監視・監督する機関を置くことになります。

監査役には会社の会計処理を監査する「会計監査」と、取締役の業務執行が適法かどうかを監査する「適法性監査」の2つの権限があります。

他に、取締役など役員に対して事業報告を求め、会社の業務・財産状況を調査することも認められています。

さらに、取締役会に出席して意見を述べ、株主総会で取締役の不正・違法行為を監査報告書を通じて提出する義務があります。 (さらに…)

内部統制の構築義務

内部統制の構築義務

取締役会は、取締役の職務の執行を監督する義務がありますが、会社の規模が大きくなると、取締役がそれぞれの職務の執行の適法性や妥当性を監督することは物理的に困難になってきます。

そこで、会社の業務執行が適法に行われるようなしくみとして内部統制システムを構築する義務を取締役会に負わせています。

内部統制システムが適切に機能していれば不正は行われないはずですし、万が一不正が行われても、取締役会までその事実が通知されます。

会社法では、取締役会に以下の体制整備を義務づけています。

  1. 取締役の職務の執行が法令・定款に適合することを確保するための体制
  2. その他会社の業務の適性を確保するための体制
  • 取締役の職務の執行に係る情報の保存・管理に関する体制
  • 損失の危険の管理に関する規定とその他の体制
  • 取締役の職務の執行が効率的に行われることを確保するための体制
  • 使用人の職務の執行が法令・定款に適合することを確保するための体制
  • 会社・親会社・子会社からなる企業集団における業務の適性を確保するための体制
  • 取締役が2名以上の場合には業務の決定が適正に行われていることを確保するための体制
  • 監査役の監査の実効性を確保するための体制

これらの内部統制システムには、構築したシステムを実際に運用し、その効果を審査し、さらに不適合があれば是正することが義務づけられています。

そこで、特定の事業において管理体制が不十分であったことが原因で重大な不祥事が生じた場合には、その事業における内部統制システムに不備があったということになるため、取締役会にはその事業の体制を是正する義務があります。

その義務を怠ったために再び不祥事が発生した場合は、取締役など内部統制システムの構築義務違反として損害賠償責任を負う危険性が高まります。

一方、内部統制システムは、会社の業務執行を取締役自らが監視できる規模の会社では必要不可欠ではないため、会社法では、資本金5億円あるいは負債金額200億円以上の大企業にのみ構築する義務を課しています。

取締役会の決議事項は、各取締役が知っていて当然だとみなされていますが、会社の規模が大きくなると、小さな問題が取締役などの経営陣にまで上がりにくくなります。

しかし、取締役会の議題に上がらなかった重要性の低い案件で不祥事が起きた場合、取締役はその案件について意思決定を行っていないため、取締役が監視義務を尽くしたかどうかが問題とされます。

しかし、内部統制構築義務が問題とされる場合には、なぜ、そのような違法行為がなされるようなシステムを採用したのかという点が問題とされ、企業の規模が大きいためその違法行為がなされた事実を知らないというだけでは責任を免れなくなります。

このように、会社法が取締役に対して期待する役割は、会社の重要な業務についての意思決定を行い、他の取締役の業務執行を監督し、代表取締役の選任・解任を行うことです。

重要な業務執行は取締役会で決定され、取締役に期待される職務の多くは、取締役会によって執行されます。

つまり、それだけ取締役会が果たす機能は重要だといえます。

また、会社法では、取締役が他の取締役の業務執行を監督することや、代表取締役の選任解任を・行うことも重要な義務としています。

そこで、これを怠ると取締役の義務違反を問われることになります。