初めての役員・取締役入門

会社の所有者である株主ではなく、経営の専門家である「取締役」が株式会社の実際の事業を行うのです

取締役の重い義務と責任

取締役の重い義務と責任

取締役の重い義務と責任

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会社から経営を委任されている取締役は、取締役会の一員として重要な業務執行の意思決定を行い、代表取締役または業務執行取締役として会社の業務を執行するなど、会社経営における重要な役割を担っています。

そのため、従業員時代とは比べものにならないくらい裁量も大きくなりますが、それを濫用する者が出てくる可能性もあります。

それを防ぐことを目的として法律で重い義務と責任が定められています。

取締役が負う義務

取締役の義務のなかで、善管注意義務は日常的に問題となる重要なものです。取締役は会社、つまり株主と委任契約を結んでおり、受任者は委任者に対して損害を与えないよう配慮する義務を負っています。

この義務が善管注意義務です。

取締役が業務を行う場合、その意思決定が会社の利益を害さないよう十分に内容を審査する必要があり、会社の代表者として業務を行う場合も不合理な契約の締結で会社に損害を与えることがないように注意する義務を負います。

会社の事業が利益を出せるかどうかは、そのときの経済状況にも大きく影響されますが、不安定な経済環境の中で利益を上げるには、取締役はときにはリスクを取りながら業務に励まなくてはならないこともあります。

しかし、会社に損害が出た場合でも、その都度取締役に責任を問うことは現実的ではありません。

そこで、最近では「経営判断の原則」が採用されるようになりました。

これは、取締役の善管注意義務を見る場合に、会社と取締役との間に利害対立がないことや、取締役の意思決定過程に不合理がないことだけを審査し、判断内容の合理性は審査しないというもので、日本における裁判例では、次の4つの要件を満たしているかどうかで判断します。

  1. 法令・定款に違反していないか
  2. 会社のためにやっていることか
  3. 経営判断するにいたった前提事実の調査を十分に行い不注意でなかったか
  4. 前提事実をもとに判断した場合は著しく不合理ではないか

なお、取締役が負う善管注意義務は、その地位・状況にある者に通常期待される程度の水準であるとされています。

そこで、専門的な能力を期待されて取締役に選任された者は水準が高くなるとされています。

代表取締役をはじめとする役付取締役や財務担当取締役などの業務執行役員は、役付でない取締役や非常勤取締役に比べて、求められる責任の重さは異なります。

取締役のもうひとつの義務は忠実義務です。

善管注意義務は民法に基づくものですが、忠実義務は会社法で課せられたものです。

会社法では、「取締役は、法令・定款および株主総会の決議の遵守し、会社のために忠実にその職務を行わなければならない」と定めています。

また、「取締役がその地位を利用して、会社の犠牲のもと自己の利益を図ってはならない」という考え方もあります。

たとえば、会社と取締役個人が取引をして、お互いの利害が対立する場合に起こるケースがこれに当たります。

その際に、取締役が会社の利益ではなく、自己の利益を優先すると、忠実義務違反となります。

さらに、取締役には他の取締役の業務執行が法令・定款に違反していないかどうかを監視する義務があります。

これは、取締役に期待される職務のひとつで、他の取締役の不正行為を監視し、法令違反などが認められた場合にはそれを是正することが求められています。取締役会の決議は多数決です。

そこで、必ずしも取締役ひとりの力で、すべての不正行為が是正できるわけではありません。

しかし、「反対」だということを、取締役会で表明しておく必要があります。

しかし、口頭での発言は証拠に残らないので、議事録に「反対」の記録が記載されているかどうかを確認する必要があります。

議事録に「反対」が記載されているにもかかわらず是正することができず、後にその議案が会社を揺るがす問題になったとしても、取締役会で反対を表明した事実がある場合は、監督義務を尽くしたものと評価されます。

名目取締役の場合も、取締役として登記されている以上は、たとえ報酬をもらっていない場合でも株主や債権者などの第三者に対する責任が生じます。

取締役の任意懈怠で債権者などの第三者に損害を与えた場合には、取締役は第三者に対して直接、損害賠償責任を負うことになります。

この場合の損害賠償義務は第三者に対してですが、取締役の義務違反はあくまでも会社に対する善管注意義務、忠実義務等の義務に違反したか否かが問題となり、義務違反の有無を審査する場合は、経営判断の原則が適用されます。


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