目標件数の設定方法に「取引拡大額」を加味します
ここまでのプロセスマネジメントの方法は、「案件型(新規顧客対象に、新規案件をセールスする)」の営業スタイルを前提としています。
これに対して、同じ営業でも、「ルートセールス型(既存顧客対象に、深く新たな売上を上げる)」スタイルもあります。
このスタイルは「自分のところには合わない」という意見があるかと思います。
これはよくある意見なのですが、ルートセールス型、既存顧客開拓型の営業にも「プロセスマネジメント」は、当然のことながら必要ですし、目標からの逆算思考」も適用可能です。
ただし、マネジメントの方法とツールには下表のとおり使い分けが必要です。
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案件型(新規開拓型) |
ルートセールス型(顧客深耕型) |
顧客 |
新規 |
既存 |
商品/条件 |
新規取引商品 |
新規取引商品/既存取引商品 |
予算からの落とし込
み方法 |
目標件数=目標金額÷平均単価 |
目標件数=目標金額÷1顧客当たりの取引拡大額/顧客星取表 |
マネジメントツール |
「セールス標準プロセス&マネジメントポイント」 |
- セールス標準プロセス&マネジメントポイント
- 「顧客攻略作戦台帳」/「顧客攻略作戦台帳
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基本的に、両者の「プロセスマネジメント」の方法は、大差はありません。
しかし、細部に若干の相違があります。まず、ルートセールス型の場合の目標の設定方法です。
例えば、医薬品や食品などの製造業者や、各種卸売り業者などは、一旦顧客とすると、よほどのことがない限り毎月一定数量以上の売上を見込むことができます。
したがって、自らの目標予算を達成するためには、既存の顧客に対する取引量を拡大することとなります。
さらに、全体の取引量を増やすには、新商品・関連商品の開発と取引を開始します。
ここでは、新商品の取引を拡大することにより、月々安定して売上増を見込める形のセールスを想定します。
目標金額の設定方法は、≪目標予算金額⇒目標件数(社数)⇒必要行動量≫ですが、「案件型」とルートセールス型では異なります。
案件型の場合(新規顧客、新規案件の場合)は、{目標金額÷平均受注単価=目標受注件数}です。
一方「ルートセールス型」の場合(既存顧客、顧客深耕の場合)は、{目標金額÷1顧客当たりの取引拡大額=目標件数}となります。
一事例です。
ルートセールス型で、担当者同士で6ヶ月商談し基本的に合意し契約しました。
新たに顧客を獲得し取引が拡大することによって、1社について月間100万円(6ヶ月で600万円)の売上増が見込まれる場合、目標金額÷600万円が、この会社の取引拡大目標件数(社数)となります。
ルートセールス型のKPI計算方法(練習問題4)
ある会社の営業部(ルート営業)の「営業マン1人当たりの月間目標受注件数」を算出してください。
ただし、以下の条件付きです。
- 一度、商品を特定して取引が開始されると、継続して売上が上昇するビジネス。平均的に、毎月10万円の売上が上昇すると仮定(期間内の取引の終了については、ここでは考慮不要。
- 既存商品(すでに取引中)での取引維持は除いて、増額しなければならない未取引商品による年間の実質目標売上は1億円。
- 営業マンは10名。
- 3月末決算、現在5月末として、6月j工の計画を考慮する。
- 平均商談期間を3ヶ月。納期は1ヶ月。そのため、初回売上は納期完了後翌月。
- 小数点以下は切り上げ、整数で回答。
(解答・解説4)
- 有効営業期間は、12ヶ月間-2ヶ月間(経過分)-3ヶ月間(商談期間)-1ヶ月間(納期)=6ヶ月間
- 1ヶ月当たりの平均売上は、10万円×6ヶ月間×(6+1)÷2=210万円 210万円÷6ヶ月間=35万円
- 営業マンの月間目標受注件数は、1億円÷10名÷35万円=28.6件≒29件(個人年間目標受注件数)、28.6件÷6ヶ月間=4.76件≒5件(個人月間目標受注件数)
(解答)月間目標受注件数は5件 これで、目標達成のために必要な、取引拡大件数が明確になりました。
既存顧客をランク分けします
次に、どの顧客に対して取引を拡大するか、選別基準を考えます。
営業作戦を練るというわけです。
A:取引実績と拡大余地の両方がある顧客
B:取引実績はないが、将来は拡大できる可能性のある顧客
C:取引実績はあるが、拡大できる可能性のない顧客
D:取引実績もなく、将来拡大できる可能性のない顧客
以上のように格付けというか選別をしないと、営業マンは、本来行くべき訪問先ではなく、自分の好みで会社を訪問することになります。
たとえば、経営者や営業マネージャーがAやBを訪問して欲しいと望んでいても、営業マンはCを訪問するということがありえます。
さらに、顧客ランクごとに営業作戦をどう立てるかが重要になります。
まず、Aランクは、発展客です。
既存最重点顧客拡販先ですから、当方と先方の営業担当者の商談だけではなく、上司を動員すべき場合があります。
次に、Bランクは拡大客です。
新規大型競合客先で競合他社におけるAランクの顧客ですから、彼らもトップクラスの営業マンが担当している可能性があります。
それを自社に有利に導くには、こちらもトップクラスの営業マンを動員すべきです。
Cランクの顧客は維持客です。既存成熟親派客先です。
高額の対価であるのに、取引の拡大余地が限られていることから、あまり高いレベルまで営業力を投入すべきではないと思います。
しかし、長年の顧客関係の場合には、勝手な取引を言われることもありえます。
そういう場合には、誠意を示しながら徐々に営業から撤退するか、あるいは一部のサービスを有料化すべきです。
最後にDランクの顧客は成行の客で小型取引客先です。
選択と集中という次元で判断すれば、営業担当者の担当外かもしれません。
新人営業担当者やコールセンターでの一括対応としている企業も数多くあります。
以上のように、顧客を取引実績によりランク付けします。
いずれにしても、*「パレートの法則」を導入すべきです。
Aランクの顧客は、全顧客のうち最大でも20%以内に限るようにすべきです。
*「パレートの法則」とは、イタリアの経済学者の学説。経済において、全体の数値の大部分は、全体を構成するうちの一部の要素が生み出しているという説。80対20の法則とも呼ばれる。あくまでも経験則の範囲です。 (さらに…)