骨董品ビジネスを始めよう!

「道楽」は崩れた感じがしますが、「趣味」は人生の糧のようなもの。道楽に陥らない、骨董収集の手ほどきと、単なる趣味でなくビジネスに繋げる道筋を紹介していきます。

茶道具

茶道具

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茶道人口の減少で骨董市場における茶道具の占める比率も減っていますが、価値観の変化、時代の変わり目こそ面白いことがあり、骨董好きにはまたとないチャンスが生まれます。

「あっち堂」の店主、Aさんがまだ20代の頃の話です。

朝鮮陶磁に惹かれ釜山に渡ったAさんは、東菜(トウライ)、慶州へと足を伸ばしました。

大邱の近くの扶余(フヨ)で泊まることにしたAさんは、小さな骨董屋に立ち寄りました。

「何か?」そっぽを向きながら話す骨董屋の店主。

儒教の教えが残っているのもあってか、客でも若造とみると、売る立場なのに胸を張って物を言います。

「見せてもらってもいいですか?」「たいした物はないよ」「……やっぱりないな」「だから言ったろ。いい物はソウルの業者が持って帰る」「この白磁の皿、初期(李朝初期・15世紀)あるかな?」「作っていたところを見てたわけじゃないから分からん。勉強するんだな」「奥の茶碗、見せてくれる?」Aさんは、ガラス棚の奥にある茶碗が気になっていました。

「あんな茶碗見てもしょうがない。高台が腐っている」Aさんも意地になって、棚の奥へ手を伸ばしました。

やっとのことで茶碗を握った時、指先からいい感触が伝わってきました。

埃を被っていますが、柔らかい手触りと細かい凹凸の釉肌が、何か特別な感じがします。

「そんな物どうするんだ? 買わなけりゃ後でちゃんと戻せよ」店主はどこまでも横柄です。

「これいくら?」「あんたはこれにいくらつける?」「1万円でどう?」店主は蝿を追うように出て行けと手を振りました。

傷物の茶碗でも目の玉が飛び出るような値段を言う骨董屋がいたりしますが、彼もその口のようです。

「じゃ、いくらで?」「10万持ってるか?」実際は持っていましたが、Aさんは「ない」と答えました。

ここからが値段交渉の本番です。

店主が数字を出したのは、売りたいという意思表示だからです。

「いくらならある?」「2万円ほど」「それでいい。早く金を出せ」「あ、バス代や旅館代もあるし……どうしようかな」茶碗を置いて店を出るそぶりを見せたAさんに店主は、「待て、若いの。1万でいい」店主は初めから1万円でもいいと思っていたようですが、日本人相手なので少し揺さぶってみたようです。

Aさんが手に入れた茶碗は、見事な李朝初期の井戸茶碗でした。

日本に持ち帰ると、茶碗をぬるま湯に入れ、それから一昼夜炊き続け、茶碗から黒い土を出し尽くしました。

それから茶を点て、磨き続けていくと、茶碗は少しずつ変化していきました。

まず、釉肌に茶が入り、琵琶色が濃くなって貫入にも茶が染みていきました。

俗にいう井戸貫入(細かい釉割れ)です。

高台は大井戸茶碗のように高くありませんが、竹の節状に削られています。

高台の中央のところがざっくり削られ、尖っていました(兜巾)。

そして高台内外に釉薬の縮れ、カイラギが見えます。

持ち帰ってから2年が過ぎ、350年の歴史をくぐってきたような柔らかい肌合いを帯びてきた茶碗に、Aさんは箱、仕覆、風呂敷をしつらえ、ある茶会で披露しました。

席にいたある陶芸家が茶碗を取り上げ、しげしげと眺めました。「伝来は?」「扶余で買って2年育てました」「それはいい。大概何々家伝来と大ボラを吹くが、井戸茶碗で伝来がついている物は必ずどこかの会記に出ている。気に入った。いくらだ?」「250万円です」高すぎたかな、と後悔したAさんでしたが、一旦口に出してしまったことはもう戻りません。

「それでいいのか?」という声が聞こえたのは、そのすぐ後だったそうです。

オークションでも2~3年気長に育てるつもりであれば、びっくりするほど出世する茶碗や酒器が出ていることがあります。


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