茶道人口の減少で骨董市場における茶道具の占める比率も減っていますが、価値観の変化、時代の変わり目こそ面白いことがあり、骨董好きにはまたとないチャンスが生まれます。
「あっち堂」の店主、Aさんがまだ20代の頃の話です。
朝鮮陶磁に惹かれ釜山に渡ったAさんは、東菜(トウライ)、慶州へと足を伸ばしました。
大邱の近くの扶余(フヨ)で泊まることにしたAさんは、小さな骨董屋に立ち寄りました。
「何か?」そっぽを向きながら話す骨董屋の店主。
儒教の教えが残っているのもあってか、客でも若造とみると、売る立場なのに胸を張って物を言います。
「見せてもらってもいいですか?」「たいした物はないよ」「……やっぱりないな」「だから言ったろ。いい物はソウルの業者が持って帰る」「この白磁の皿、初期(李朝初期・15世紀)あるかな?」「作っていたところを見てたわけじゃないから分からん。勉強するんだな」「奥の茶碗、見せてくれる?」Aさんは、ガラス棚の奥にある茶碗が気になっていました。
「あんな茶碗見てもしょうがない。高台が腐っている」Aさんも意地になって、棚の奥へ手を伸ばしました。 (さらに…)