TOEFLテストは、たいへん興味深いテストです。
そして、その魅力にはまってしまったAさんについてお話したいと思います。
Aさんは22歳で大学(英文科)を卒業後、2年間の教員生活を経て、もう一度学業に戻りました。
その理由としては、自分の英語力不足を痛感し、社会学も一緒に学びたかったからです。
そんな訳で、主に海外からの留学生や帰国子女向けに英語で授業を行っている上智大学外国語学部比較文化学科に入学しました。
なお、出願するのにはTOEFLのスコアが必要だったので、そのための勉強を始めたそうです。
そして、このとき、AさんはTOEFLのテストの面白さを実感するようになったのです。
大学入学後、すぐに留学を決意
Aさんは上智大学に入学した際に、偶然大学で交換留学生の募集を知り、すぐに応募しました。
そして、試験に合格し、翌年にはニュージーランドに留学しました。
そのときのAさんのTOEFLのスコアは677満点中、617点でした。
また、当時はTOEFLにライティングセクションが加えられたばかり(1986年7月が初回)で、そのライティングセクションも年12回行われるTOEFLのうち、5回だけ実施されていた時代でした。
ニュージーランドを留学先に決めた理由
ニュージーランドはオーストラリア大陸の南東に位置し、North Islad(北島)とSouth Island(南島)という2つの主要な島からなる島国です。
首都は北島の最南端にあるウェリントンで、Aさんは北島の主要都市オークランドにあるオークランド大学に1年間留学することになりました。
Aさんが留学先としてニュージーランドを選んだのは、先住民であるマオリ族と植民者であるアングロサクソンとの関係が、他の英語圏の国々の先住民と入植者の関係に比べて良好で、社会学を専攻するAさんには格好の研究テーマになると考えたからでした。
面白いニュージーランド
Aさんがニュージーランドを留学先に選んだのは、2つの研究テーマを追求したかったからです。
そのひとつめは、英語だけでなくマオリ語も公用語として使われている点です。
ニュージーランドは1840年にマオリ族とイギリスとの間で結ばれたワイタンギ条約(マオリ族がイギリス国王に主権を譲渡する代わりに、イギリス国民のもつすべての権利を享受することを定めた条約)に基づいて、入植者によって不法に強奪された土地がマオリ族に返還されていました。
そして、ふたつめの研究テーマはニュージーランドの確固たる反核政策です。
ニュージーランドは日本の日米安全保障条約に相当するANZUS条約をアメリカ、オーストラリアとの間で締結していますが、核に対する姿勢が日本とはずいぶん異なるのです。
ちなみに、両国とも核の国内への持込を禁止していますが、日本は核弾頭ミサイルを搭載したアメリカの艦船が日本国内に入港する際に、核の有無を問い合わせることはしません。
一方、ニュージーランドでは、核の有無の問い合わせに対して、軍事上の機密であるから答えられない、という返事が返ってきた場合は入港を認めません。
こうした姿勢の違いを研究したくて、Aさんは数ある国々からニュージーランドを留学先に決めたのです。
新学期開始は2月
ニュージーランドの新学期は、2月に始まります。
2月というと日本では厳寒期にあたりますが、南半球に位置するニュージーランドでは、真夏となります。
よって、Aさんは1月に上智大学の期末試験を受け、単位を取得してから留学することができました。
ちなみに、アメリカの大学では、新学期は9月に始まります。
このため、特に1年間の留学をする場合には、3月に卒業を迎える日本との年度のずれが時間的なロスに繋がってしまうことがあります。
したがって、最近では日本の大学も新学期を9月開始にしようという動向が見受けられます。
ニュージーランドの大学は3年制
ニュージーランドの大学は3年制で、特定の学部や学科に入学するというわけではありません。
学生は好きな科目を好きなだけ履修することが可能です。
また、日本の大学とは異なり、1年次から専門科目を学ぶこともできるのです。
当時の日本人留学生はごくわずか
Aさんがオークランド大学に入学したとき、日本人留学生はAさんを含めてたった5人でした。
しかし、最近はオークランド大学のホームページによると、100カ国以上から4700人の留学生(学生総数3万4000人)が来ているそうです。
よって、日本人の留学生もかなり増えているのではないでしょうか。
アクセントの違い
ニュージーランドの大学では、英語に関しては、教授は一般の人に比べてイギリスの標準的な英語に近い発音である方が多いです。
さらに、講義の内容を学生によく理解させるために、丁寧に説明してくれます。
しかし、ニュージーランドに留学した学生が一番苦労するのは、日常会話のリスニングです。
ニュージーランドやオーストラリアの英語では、「エイ」が「アイ」になるのです。
たとえば、everydayであれば、「エブリダイ」と発音します。
さらには、母音の発音がすべていわゆる標準的な英語の発音から少しずつずれているのです。
したがって、オーストラリアやニュージーランドに留学することを考えている方は、インターネットやNHKのラジオ放送などを利用して、早めに彼らの英語に慣れておいたほうがいいでしょう。
1年の留学期間はあっという間
ニュージーランドの大学は特定の学部や学科に入学するわけではなく、学生は好きな科目を好きなだけ履修することができます。
よって、Aさんはニュージーランド人の学生よりも多くの科目を取って勉強に追われたので、あっという間に1年が過ぎてしまいました。
そして、1年の留学期間終了後、もとの上智大学に戻り、必要な単位を取得しながら、将来の仕事を探していたところ、TOEFLを教える仕事に出会ったのです。
TOEFL講師として
Aさんは大学在籍中からTOEFLの指導にあたっていたので、大学卒業後もTOEFL受験の指導を続けることにして、TOEFL対策の専門校、留学機関、専門学校で教鞭をとるようになりました。
その一方で、TESOL(英語教授法)を学ぶべく、主に日本の中学、高校の先生方を対象とした、渡米せずにいながら学べるコロンビア大学ティーチャーズカレッジの修士課程に入学し、7~8月の夏休み期間中集中的に学びました。
そして、その直後の9月にはテンプル大学ジャパンの修士課程に移籍し、1学期に1科目のペースで4年近くかけて卒業しました。
CBTで満点
Aさんは、上智大学に入学したときのTOEFLスコアはPBTで677点満点中617点でした。
そして、Aさんは上智大学在学中の1988年にTOEFLの講師になりましたが、仕事柄定期的にTOEFLを受験して、試験の傾向を把握しなければなりません。
1995年7月にPBT(Paper-based Testの略)TOEFLのフォーマットが一部変更になったので、受験してみたところ、677点満点中673点でした。
その後日本では、2000年10月にCBT(Computer-based Tastの略)というテストが導入され、2回受験したところ、両方とも満点(300点)でした。
CBTのほうがPBTに比べて時間的な余裕があり、じっくり考えられるという点が有利に働いたといえます。
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